【数量感覚】ピグマリオンのヌマーカステン

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今回は、「数量感覚」を養うための一つの方法論として、ピグマリオン学育研究所の「ヌマーカステン」について紹介をしたいと思います。

娘が4歳で苦もなく繰り上がりの足し算、引き算ができるようになったのは、明らかにヌマーカステンのおかげです。

「数を形として捉える」のにとてもわかりやすく、非常に良い教具だと思っています。

ヌマーカステンとは?

ヌマーカステンは、ドイツ語のNummer(数)とKasten(箱)を組み合わせた造語で、「数の箱」という意味です。

幼児に対して数を集合数として実感させたり、数の成り立ちを視覚的に実感させたりしながら、たしざん・引き算の基礎を作り上げるためにピグマリオンが開発した教具です。

箱は外箱と中箱に分かれており、中箱には左右の部屋の仕切りがあり、玉が左右に行き来できるようになっています。

上の写真であれば、一列でも7個、2列でも下に5個、上に2個があり7個、などと数の合成や分解を直感的に理解することができます。

ヌマーカステンを効果的に用いれば、繰り上がり・繰り下がりに関して、いつの間にか解けるようになります。

娘に関していうと、当初ヌマーカステンを使わずに10までの足し算や引き算をしていたため、当初は面倒がって拒否反応を示したのですが、しばらく経ったらヌマーカステンを使っての計算に慣れ、使い始めて3ヶ月程度で繰り下がり・繰り下がりの問題が解けるようになりました。

ヌマーカステンの使い方

実際の、ピグマリオン教室でヌマーカステンを指導している動画が上がっていますが、左右のスペースでそれぞれ玉がいくつあるかを数えてもらったり、左右のスペースにある玉を合わせて数えてもらったりすることで、数量感を養いながら足し算ができるようになることを目指しています。

また、ヌマーカステンの使い方を、開発者の伊藤恭さんご自身でも解説されている動画があります。

こちらの動画でも解説されていますが、ヌマーカステンの良いところは、例えば、9個という数があったときに、「3個の玉を上中下の3段」や「上の段に4個、下の段に5個」「左のスペースに5個、右のスペースに4個」と、複数の形で数を理解することができます。

このやり方が、「計算の丸暗記」「繰り返しによる丸暗記」での四則演算の学び方と最も違うところと言えます。

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レベル1: 1〜5の数の理解と計数能力について

数量感覚の養成(1〜5)

まずは、白玉を入れて、1から5の数の確認をすることから始めます。

右や左の箱を隠しながら、順不同で1から5の数を答えてもらったり、右と左の玉のどちらが多いかなどを答えてもらうように使います。

数の合成と足し算(1〜5)

3の合成の場合、下の図の左側のように、右に1個の白玉、左に2個の白玉を見せてから、右側のように片側に寄せて「1個と2個を合わせて3個になる」ということを教えます。

何度も繰り返すことで、自然と合成のイメージが頭に浮かび上がるようになります。

私の場合は、慣れてきたら、「1+2=3」「2+1=3」というように、足し算の式を混ぜて答えてもらうようにしました。

数の分解と引き算(1-5)

数の分解の手順は、数の合成と逆の手順を取ります。

まずは、上の図の左側の図のように5の数を見せてからシャッフルをし、「左の箱に3個あった場合、右の箱には何個ある?」というような問いかけをしながら、分解の概念を理解してもらいます。

その後、足し算と同じように、慣れてきたら引き算の式での問いかけと混ぜながら、分解と引き算の融合をはかるようにしました。

このように、十分な数量認知をさせるのが、ヌマーカステンの役割になります。5という数は、「0と5」「1と4」「2と3」「3と2」「4と1」「5と0」「1と1と3」「1と2と2」などが集まった数ということを、「覚える」というよりも「脳に染み込ませる」ことで、数量感覚を身につける基礎づくりになります。

数量感覚について補足すると、基本は5個の玉が並んでいるイメージですが、「3の上に2を乗せた形や4の上に1を乗せた形が5である」というように、「数を形として認識する」ということも早い段階から行うことで、将来の「面積の理解」などのときに役立つことになります。

レベル2: 10以下の数の理解と計数能力について

ピグマリオンでは、「数能力を獲得できるか、できないかは6〜12の段階を、どのように指導するかにかかっている」と説いています。

この段階で、数唱と丸暗記で数を数えたり計算したりすると、数量感覚が養われず、思考力・創造力が育ちにくいと考えています。

個人的には、全てに当てはまるとは思っていません(ピグマリオンを経ずして優秀な算数や数学の成績を取る方はたくさんいる)が、少なくとも娘にはこちらのやり方が合っていたと思います。

数量感覚の養成(6〜10)

6以上の数量感覚については、まずは5個の玉の上に何個の玉が乗っているかを確認しながら覚えていきます。

まずは、下の段に全部球が乗っている個数が5個であると認識してから、5個の玉の上に3個の玉が乗っていて8個となることを理解していきます。

また、5個の玉の段が2段全て揃っていると10個になることを理解してから、10個から2個足りなくなったら8個であるという認識もできるようにしていきます。

同時にやる必要はありませんが、少しずつ6位上の数に慣れてきたら、数を「まとまり」として理解するために、4個ある段を2つ作った数も8になり、3個の段が2つ、2個の段が1つある数も8になるということも、少しずつ体験してもらうようにしてきます。

レベル3: 繰り上がりと繰り下がりについて

ピグマリオンでは、1から20までの数量認識の方法と数の処理方法の能力を身につけることを非常に重視しています。これらの能力を身につけることで、さらに大きな数の数量認識や数量処理の能力を高めることができるとされています。

とにかく、数を1個ずつ「数える」のではなく、「かたまりとして捉える」ことを重視しています。

そのため、繰り上がりの計算などをする前に、まずは、

上の図の球が13個あるのを、瞬時に把握できるようなワークをヌマーカステンのを通して行います。

「真ん中の段と下の段で10、その上に3つの球があるので、全部で13」という理解をしていきます。

あるいは、同じ13個でも、

1-10の数量認識の練習で、下の段が合わせて10個あることは理解しているので、その10個の上に3つの球が乗って、合計13個である、というようなワークもしていきます。

または、左側に8個、右側に5個のヌマーカステンがあり、これらを足すと13になるという解説をしてあげたりすることもあります。

これらの数量の認識がある程度深まった段階で、

このように、左側に7個、右側に6個のヌマーカステンがあるような問題を解くことで、「7+6=13」になることを確認していきます。

なお、こちらの取り組みを始める前に、娘はすでに繰り上がりの足し算がある程度できるようになっていました。

というのも、すでに頭の中にヌマーカステンが映像記憶としてあるようで、寝る前のお布団で「5+8」は?と質問をすると、「5と5と3で13」と答えられるようになっていたのです。

つまり、ヌマーカステンで1から10の数量認識の項目をしっかりと実践していれば、苦労すること繰り上がりの足し算できるようになる下地が整います。

下の動画ではピグマリオンと提携しているはまキッズでのヌマーカステンの説明動画になっています。

こちらの動画では、「9+8」の時は、「9から2個たま8の方へ引っ越しして、10と7になるから17」という解き方をしていますが、娘の場合は「9は(1段目の)5の上に4、8は5の上に3あるから、2段目は4+3で7、1段目は5+5で10、7+10で17」という解法を編み出しているようです。

ピグマリオンでは、「子どもが自分で解法を編み出す」という能力を大切にしており、このように説明動画と違う解き方を子どもがしていても直すことはしません。

もちろん、将来学校で「さくらんぼ算での繰り上がりの解き方」を習うと思いますが、その時には「こういう解き方もあるんだな」と学んでくれれば良いと思います。

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繰り上がり・繰り下がりと平行して鍛えたい「つみきのかず」

「ヌマーカステン」は球(玉)ですが、並行して「立方体のつみき」を使うことで、更に数量感覚を養うことができます。

ピグマリオンでも「ウッディブロック」として販売されていますが、Amazonや楽天で購入しやすいのは七田式の「しらきのつみき」です。

数量感覚を養う際には、くもんの「図形キューブつみき」もように色がついているものよりも、「しらきのつみき」のような色がついていないものの方が、幼児は余計な混乱をしないと思います。

なお、繰り上がりや繰り下がりの取り組みが並行してできるようになってきたら、プリントワークを追加することで、より数量感の育成の補完ができると思います。

その際、もちろんPYGLIシリーズの「積み木の問題」「積み木の数」でも良いのですが、

個人的には、こぐま会の「つみきのかず」の方が、問題の種類も多く、段階的に学びやすい構成になっているので、幼児が楽しみつつ「立方体のつみき問題」を解ける問題集のように思います。

ヌマーカステンは自作できる!?

ヌマーカステンは、現在はピグマリオンのページでセット販売でしか購入できず、1万円以上かかってしまうので、牛乳パックを組み合わせたり、お菓子の箱を上手く使って、作成する方法があります。
Yahoo!ショップで5016円で販売していました

最も手に入りやすいお菓子の箱は、おそらくアーモンドチョコレートの箱ですね。

しかし、ヌマーカステンは、縦10cm×横20cm×高さ2cm、アーモンドチョコレートの箱は、縦9cm×横15.5cm×高さ2cmなのです、ビー玉は15mmのものを用意する必要があります。

アーモンドチョコレートの箱は、ビー玉17mmだと横に10個並べられない
(9個めのビー玉が入りきっていない)

15mmのビー玉も販売はされているのですが(アマゾンで2000円程度)、澤家にもある一般的なビー玉の大きさは17mmなので、これだと8個しか入らないので悩ましいですね。

ヌマー カステンが単品販売をしていなかったり、似たような商品が出回っていないのは、2012年に特許を取得したからでしょうか?

2020年時点で、日本、スリランカ、シンガポール、台湾、アメリカで特許を取得しているようです。

当初は、自作のヌマーカステンでも良いのでは?と思ったのですが、「映像記憶」の観点から考えると、例えばカラフルなビー玉を用いると、映像記憶の定着が遅くなったりするのでは?

と思ったりします。

その意味で、球はシンプルな白の方が、良さそうにも思います。

もちろん「教育にかけるコストを減らしたい」というのはわかるのですが、開発者の意図をあまり理解しないまま、形だけ似せても、思わぬ弊害が出る可能性もあるかもしれないと思うに至りました。

なお、「2歳児のさんすう」という本でも、ヌマーカステンの説明が書かれていますが、アマゾンではなくYahoo!ショッピングからご購入いただいた方が安いと思います。

こちらのショップから、ヌマーカステンも5,016円で購入できます。

ヌマーカステンを指導する上での2つの注意点

1つ目の注意点

1つ目の注意点は、飽きさせないような工夫をしなければいけないということです。

このヌマー カステンは、前述したとおり「数を量として捉える初歩として、とても良い教具」と思うのですが、こどもは常日頃変化を好みます。年少ムスメも、現時点では嫌いではないですが、他の教具やおもちゃに比べて「とても好き」という反応ではありません。

立方体のブロックや100玉そろばんで似たようなワークをすることも理解を深められると思います。

2つ目の注意点

2つの注意点は、計算に慣れてきたらヌマーカステンに頼りすぎないということです。

最終的には、「玉のかたまりをイメージとして捉える」のが目標ですので、かたまりと数の両面からのアプローチをして、頭の中でヌマーカステンのイメージができるようになると良いと思います、

さいごに

「5という数は、どのくらいの量なのか?」「13という数は、どのくらいの量なのか?」という数量感覚。

単に「未就学期に計算ができるようになる」ということではなく、それより大切な「数と量の関係」が直感的にわかるのが、ヌマーカステンの良いところです。

20までの数量感覚は、ヌマーカステンでがっちりと身に付けることが可能になり、その「オマケで繰り上がりや繰り下がりの計算ができるようになる」と言えるのかもしれません。

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